「和菓子の愉しみ」八雲茶寮




「夏越の祓い」という行事と、
八雲茶寮さんでお食事と和菓子をいただいたお話です



12月31日の大晦日が、新年を迎えるための大切な行事であったのと同じように、
昔は一年のちょうど折り返しにあたる6月30日にも、この半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事「夏越の祓い」が行われていたそうです。

そういえば去年、神社に行ったときに「茅の輪くぐり」というのをやったような…と思い出しました。茅の輪くぐりも、穢れ祓いのひとつなのだそうですよ。
2メートルはあるかと思われる茅萱で作った大きな輪、それを「水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命のぶといふなり」とつぶやきながら、8の字を描くように右、左と廻っていくというものです。
「右へ左へ8の字に」と書くといかにも簡単そうですが、これが難しいのです。
私も同行した方々も作法が分からず、大人3人は、何かぶつぶつ唱え、神妙な面持ちで茅の輪をぐるぐる廻っていました。少し、恥ずかしい思いをしました。
ちなみに茅の輪は「あの世」「この世」の堺に設置されている模様。我々、間違えているに違いないと思いました。


また、落語を聞きに行った時も「夏越祓い」という単語が何回も出てきました。

最近意味を知ってやっと「あぁ、あれは<なごしばらい>って言っていたの」「そこで話がつながってたの」と分かったくらいです。知らないのに、あんなに笑っていたなんて。



そんな夏越祓いのことをすっかり忘れていた6月の初め、

「和菓子の愉しみ」という会に行ってきました。
夏越の祓いに用いられる和菓子「水無月」を作って、お食事をいただくという会です。

八雲茶寮さんは、家からとっても近く、歩いていけるところにあるんです。


八雲茶寮さん「楳心菓」の菓子職人の先生。
京都で10年位上修行をされ、八雲茶寮さんでは新しい菓子表現に取り組まれているそうです。
秋田弁で話される先生が作る空間はとっても和やか、和菓子が本当に好きなんだなぁと伝わってきました。何かを教えてくれるときに「それが大好きで大好きでたまらない!」という方の話は、何時間でも聞いていられる気がします。



当たり前かもしれませんが、材料はもちろん、道具なども和のものばかりですね。
粉物もかわいい和食器に入れられています。


この裏ごし器を作っていた京都の職人さんは亡くなられたそう。
素晴らしい技術は、継承されていないとのこと…


水無月を切るためだけの包丁だそうですよ。
包丁の付け根に、指を引っ掛けるところがあります。


和菓子作りの後は、旬の食材を使ったお料理をいただきました。
これは、えーっとなんだっけ。美味しいお酒です。


自分で作ったお菓子も、お料理の最後にちゃんと出してくださいます。
水無月の他に、この「山椒のきんとん」も作りました。
この器は紙でできていて、まわりに漆を塗ったもの。
とっても軽くて美しいのです。



コルドン・ブルーで毎日洋菓子を作っていた生活が3年前。
社会人になって毎日が忙しく、外食続きで、たまに早く家に帰れても材料を揃えてごはんを作るのは本当に「一仕事」になってしまいました。
お休みの日も、はじめはお菓子作りを楽しんでいたものですが、それも仕事がもっと忙しくなると、仕事やそれ以外の用事でどんどんと優先順位からはずれていって。
ずっと続けてきた茶道も、こちらに来てやめてしまったし。
こうした季節の行事も、人から言われてあぁ、とやっと気づくような生活です。
きっと時間の作り方が下手なんですね。あと気力がないんですね。
もう、お菓子作りのいろはなんて色々と忘れかけてはいる(そう言うと色んな人からすごく怒られる)のですが、こうして何かを丁寧に作ったり、考えながら食したりって、つくづく大切なんだなと実感します。中曽根元総理が言った「食を制する者は、人生を制す」っていう言葉の通り、「食」がこれからの私を作っていくんだもんなぁ。
おざなりにしてはいけない、と。





次の日に銀座に行ったので、HIGASHIYAさんに寄ってお菓子を買って帰りました。
餡ベースになっていて、中には季節の果実や木の目が入った、ひとくち菓子。
これがとっても好きで、銀座に行ったらつい寄ってしまいます。




八雲茶寮さんでいつもすごいなぁと思うのが贅沢な「紙」の使い方。
お店の名刺や、イベントの案内、お食事に来た方にお渡しするパンフレット等々。
どれもこれも、とってもいい紙。飲食店ではめったに使わないような。
「このセットに一体いくらかかってるんだろう…(職業病)」と思わずにはいられません。
お店の方が話してくださいましたが、紙ひとつ、そこにまでこだわることで八雲茶寮さんの美意識をたもっていらっしゃるそうです。
紙はもちろん、器や道具、インテリアにいたるまで本当に楽しめる八雲茶寮さん。
HPもシンプルですが、写真がとっても綺麗なので飽きません。隅々まで、すてきですね。



(八雲茶寮さんHPより)



八雲茶寮

銀座HIGASHIYA